私は祖母と団地でふたり暮らしをしています。
いくつか家事を分担していて、
祖母は食事を作ってくれて、私は後片付けをしています。
少し気になることがあります。
祖母がたまに使う少し小さいフライパンが、
先に洗い終わっているのです。

何となく決まっているのだけど、
この小さなフライパンは特別扱いのようだ。
持ってみると、見た目のわりに少し重いです。
なかなかの年季で、見ただけで長く使っていることがわかります。
祖母は今70歳で、週3回ジムに通っているとはいえ、手首に少し負担がありそうで、
もっと軽いものに替えたほうがいいのではないかと思ってしまいます。
サイズも少し気になります。
直径はおそらく16〜20cmほど、
私がよく見るフライパンより、ひと回り小さい。
このフライパンの出番は、
トンテキを焼くときと、野菜を焼くとき。
祖母はトンテキが好きで、よく食卓に並びます。
ナイフとフォークで食べるトンテキは、焼き色はしっかりついているのに、
固くなってなくて、切りやすく食べやすい、そして美味しい。
私は祖母の作る焼きナスが好きで、
外が香ばしくて、中がトロットロに柔らかい。
「焼いた茄子ってこんなに美味しいの?」
初めて食べた時はにとても驚きました。
祖母にその感想を言うと。
「ありがとう、でも簡単よ。」
この美味しいトンテキや焼きナスを生み出すフライパンが、
何故いつも先に洗い終わっているのか。
気になってそのことを聞いてみました。
「そのフライパンは洗剤使わないから、作っている途中に洗っているのよ。」
と教えてくれました。
祖母の説明によると、
まだ熱が残っている状態で、お湯をかけて、タワシでさっとこすているそうで、洗剤は使わないそうです。
肉や野菜を調理しているのに、
洗剤使わないということに、少し驚きました。
気になるので置いてあるフライパンを触ってみると、
全く汚れてなくてキレイ、
表面はつるっとしていて、べたつきもない。
それなのに、完全に乾いた金属とも少し違う感触が残っていました。なめらかな膜のようなものが、うっすらと手に触れます。

「これを落とさないために、洗いすぎないようにしているのかもしれない」と思いました。
祖母にとってこの小さなフライパンを洗うのは、料理の一部なのかもしれません。
あとから調べてみたのですが、
鉄のフライパンは強い火で一気に焼けるのが特徴で、
肉はジューシーに、野菜は水っぽくならずに仕上がるそうです。
あのトンテキの焼き色や、焼きナスのとろっとした食感は、
このフライパンの力でもあったのかもしれません。
祖母は、「少し重いのよ」と言いながら使っています。
小さいのはその重さを和らげる工夫のようで、
大きくて重いものは減らして、今の使っているものに落ち着いたとか。
古くても良いものを使って、
お料理に合わせた道具を使って、
素材を美味しく仕上げる。
私はそんな祖母の手料理を毎日食べられる幸せ者です。





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